雪虫は二度飛ぶ

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今年も雪を知らせる使者が来た。それは白い綿のようなものをつけて、ふわふわふと頼りなく舞っていた。歩いていると、結構飛んでる。自重に耐えかねて一匹が私の服ににしがみついた。一生懸命立ち上がり、また飛び立つ。その繰り返しが、なんともいじらしく、みっともない。
『雪虫は二度飛ぶよ。春と冬の始まりにね。知らなかったでしょ?』
そうドヤ顔で話していた友人は、五年前の秋突然亡くなった。くも膜下だ。なんの前触れもなく訃報の電話を聞かされて、彼女の時間が止まっている。もうというかまだというか、心とは関係なく時間は過ぎていく。一緒に止まってくれたらいいのに、流されるまま私は日常を生きている。
「雪虫は二度、ね」
白いため息をはき、指先に雪虫を乗せる。繊細な足が私の指紋を伝って登る。前足で掌を探し当て、立ち止まると薄い翅を広げた。
ーー飛べ。
雪虫は澄んだ空へ飛んだ。
彼女のいない白い冬が、今年もやってくる。
青春
公開:18/08/21 00:28
雪虫可愛い ツイッターから生まれました 雪虫は二度飛ぶよ!

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
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『枇杷の独り言』
ショートショートコンテスト『家族』最優秀賞頂きました。

写真は全て自前でやっています(笑)

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