最後のピース

父が亡くなり一年。ようやく落ち着きを取り戻した私と母は、遺品整理を始めていた。その時に出てきたのが、一本のビデオテープ。背には『結婚式』と書かれている。
「写真すら『魂抜かれる！』とか言って、ほとんど残さなかったお父さんが映像を残してるなんて不思議ね。やっぱり結婚式は特別なのかしら？　うふふ」
と、母を肘で突っついた。しかし母はキョトンとしている。
「ビデオデッキ、まだ使えるはずだから見てみよっか」

ビデオを見終えた私は余韻に浸っていた。初めて見たわけだが、とても素敵な結婚式だった。
「結婚式ねぇ。記憶がなかったわ。ふふ」
隣で一緒に見ていた母が笑みを漏らしている。
「え？」
「一つだけポッカリと空いていたのよ。この男に邪魔されていたのね。ようやく最後のピースがハマったわ。これで、この体は完全に……」そう言った母の顔が、スーッと緑色に変色していき、額から触角がニョキリ。

「我のものだ」