ふたりの家

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――よく似た娘たちだと思った。
 私のことがえらく気に入ったらしく、さっきからなかなか動かない。すると、ひとりがこんなことを言っている。
「ほら、素敵なベンチ」するともうひとりが、
「オレンジ色の花が咲いていると、もっといいわね」とはしゃいでいる。
――おいおい、私は今でも充分素敵だろう?と叱ると「そんなの、嫌よ」と駄々をこねる。
 まったく、困った娘たちだ。お。鳥が飛んできた。青い鳥だ。おい、わがままな娘たちよ。どうせ君らは、別の色がいいのだろう?
 しかし、返事はなかった。鳥はみるみるうちに黒くなり、やがて真っ白になった。
 ――おや? 今日はひとりかい?
 声を掛けると、娘は振り向きシワだらけの顏に曲がった腰をさすりながら、笑った。
「ありがとう。私も、もうすぐ行きますね」
――今、私の中でふたりの少女が、仲良くベンチに腰掛け、オレンジ色の花を眺めている。
その他
公開:18/08/19 18:03
更新:18/12/30 14:28
北オーストリアの農家 クリムト コンテスト

二森ちる( 瞑想と妄想の森で )

二森(ふたもり)ちると申します。
人生の節目に、二つ目の名前をつくりました。童話や小説などはこの名で執筆しています。
怪談やホラー系は「鬼頭(きとう)ちる」名義で活動しています。
どうぞよろしく。

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