フラワーグローブ

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「これ何? 綺麗だね」

そう言って彼女は透明な球体の中にある家を覗き込んだ。

「あぁ。それはフラワーグローブと言ってね。ほら、こうすると」

僕がフラワーグローブを揺すると、家の周りに咲いている花が一斉に宙を舞い、ヒラヒラと家の屋根や地面に舞い降りた。

「わ、すごい!」

「スノーグローブってあるだろ? 球体の中で雪が舞うインテリア。これはその一種なんだ」

僕がそう説明すると、彼女は球体を揺すって家の周りを舞う花たちを楽しんだ。

「あら」

「どうした?」

「家の中から女の子が手を振ってるわ」

「あぁ忘れてた。その子に手を振り返してはいけないよ。振り返すと君もあの中に閉じ込められて……」

ガチャン! と音がして彼女のティーカップが割れた。コロコロと球体がテーブルの上を転がる。

「今度の子は本気だったんだけど……まぁいいか」

家の中から手を振る彼女に僕は小さく微笑んだ。
ホラー
公開:18/08/19 13:56
更新:18/08/19 13:58

小狐裕介

作家としてショートショートや短いお話を書いています!

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光文社文庫「ショートショートの宝箱」に「ふしぎな駄菓子屋」収録。
幻冬舎「未来製作所」に「砂漠の機械工」他収録。

最近はYouTubeも頑張っています!

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