眠るように

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目の前が開けて家が見えた。
逸る心を抑えドアをノックする――返事はない。
一回りしたが誰もいない。
ふと違和感を覚えた。
だが、空腹でそれどころではなかった。

一昨日、罠で捕ったキツネを売りに街に出た。
獲物が眠るように絶命する毒薬を使ったので、傷のない毛皮は高く売れた。
帰りの森の中、見かけたキツネを追っていて道に迷ってしまった。
あれから二日、なぜか果物も木の実も見つからず、口にしたのは水だけだ。

「ごめんください」
ドアはすんなりと開いた。
すぐに目はテーブルの上のパンに釘付けになる。
一瞬躊躇した後、手を伸ばした……

――人心地が付いた途端に睡魔に襲われた。
外に出て腰掛に寝そべり目を閉じる。
抗えない眠気の中、違和感の正体に気付いた。
この家の周りは花が咲き乱れていて、道どころか、私が通った一筋の跡しかない。
この森に……
……さむ……
 
アザミの花が風もなく揺れた。
その他
公開:18/08/19 11:03
更新:18/08/28 14:54
北オーストリアの農家

けんじゅう

せっかくいろいろなジャンルを用意していただいているので、
一つのテーマ(タイムカプセル)で全ジャンル書いてみようかなぁ、
なんて思う今日この頃。

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