夢で見る家

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子供の頃からよく見る夢がある。家の夢である。花畑に囲まれた家。私はその家を少し遠くから見つめている。いつかあの家の中に入ることがあるのだろうか。夢から目覚めるといつもそんなことを考える。

数十年の時が経ち、私は病院の一室で最後の一息を吐いて目を閉じた。天涯孤独の身であった。意識が暗闇へと落ちていく。



ふっと目を覚ますと、いつもあの家を見る場所に立っていた。

私はあの家に近づきドアを開けた。中には家族と思しき人々が待っていて、温かいスープと焼きたてのパンで朝食の準備を進めていた。

「遅かったね。食事にしようか」

そう声をかけられて私はテーブルの席についた。窓の外にはどこまでも花畑が広がっていて、その向こうには白銀色に輝く銀嶺が見えた。

朝食を食べ終えたら散歩してみよう。家族の団欒を聞きながら、私はそんなことを思った。
ファンタジー
公開:18/08/18 17:05
更新:18/08/18 17:07

小狐裕介

作家としてショートショートや短いお話を書いています!

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光文社文庫「ショートショートの宝箱」に「ふしぎな駄菓子屋」収録。
幻冬舎「未来製作所」に「砂漠の機械工」他収録。

最近はYouTubeも頑張っています!

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