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20世紀をむかえ、文化は爛熟し文明は高熱を帯びて各所に軋轢を引き起こしていた。奇しくもこの頃から、クリムトは、黒と金の人工美に倦み、新たな「光」を求めはじめていた。「ガス灯」よりも「夕日」よりも「朝の光」に彼は霊性を感じ、その光の下に輝く小さくも美しい生命をカンバスに写し取ろうと試行錯誤していたのである。
その朝も、クリムトは「接吻」というモチーフを得て、早朝の湖畔で、鉛筆を走らせていた。
予兆がした。
1908年6月30日午前6時。クリムトは北北東に、空の堕ちるのを見たのだった。
激しい光線と爆風のため昏倒したクリムトは、2時間後にエミーリエに発見された。新聞が「ツングースカ・バタフライの奇禍」を報じるまで、ウィーンでは誰も、その爆発のことは知らなかった。
「空の接吻、大地の死」
クリムトが空と蝶を描かなくなったのは、それからである。
その朝も、クリムトは「接吻」というモチーフを得て、早朝の湖畔で、鉛筆を走らせていた。
予兆がした。
1908年6月30日午前6時。クリムトは北北東に、空の堕ちるのを見たのだった。
激しい光線と爆風のため昏倒したクリムトは、2時間後にエミーリエに発見された。新聞が「ツングースカ・バタフライの奇禍」を報じるまで、ウィーンでは誰も、その爆発のことは知らなかった。
「空の接吻、大地の死」
クリムトが空と蝶を描かなくなったのは、それからである。
ファンタジー
公開:18/08/18 10:10
更新:18/08/18 11:54
更新:18/08/18 11:54
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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