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村の外れにある古びた空き家に、幽霊がでると噂が立った。
村人がその家の前を通りかかると、小さな窓から、長い金髪の女性が覗いていると言う。
しかし別の村人は、巻き髪の赤毛だったと言うし、また違う村人は短い黒髪だったとも言う。
以前に見かけたことがある、ということだけが幽霊の共通点だった。


その家は名のある画家が所有し、夏の間だけ、アトリエとして十数年、使っていた。
画家は常にモデルと共に、その家を毎年訪れた。
モデルは年ごとに違った女性で、同じモデルを連れてくることは二度となかった。
どの女性もとても個性的で美しく、画家を心から愛していた。
しかし、昨年高齢だった画家は亡くなり、古びた家はひっそりと静まり返っている。


今夏、空き家の庭には、色とりどりの多種の花々が咲き乱れている。
それぞれの花は、妖艶な姿で咲き誇り、甘美な香りを漂わせている。
ミステリー・推理
公開:18/08/18 07:58

まくの沙江

自分なりのショートショートができればいいと、投稿させてもらっています。
皆様の作品やコメントは、新しいアイディアが生まれて勉強になります!

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