新盆の白い線香

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「ちえちゃん、蚊取り線香とってくれるかい」
田舎のおばあちゃんちで初めて過ごすお盆。都会育ちの私は見たこともないお盆の準備を、おばあちゃんは進めていた。
「これじゃないのさ。そこに白いのなかったかい」
「白いの?」
言われた辺りを探すと、確かに白い蚊取り線香らしきものがあった。
「今年はじいさんの新盆だからね。お盆中、庭で盆踊を踊る間、これを焚くんだよ」
そう話してくれたあと、おばあちゃんは白い着物に着替えてその線香に火を付けた。線香はおばあちゃんと同じで白く、煙も灰も白い。
「匂いしないね」
私が言うと、粛々と踊っていたおばあちゃんがそっと優しい目を向けた。
「これは香取り線香って言ってね、匂いはしないの。死んだじいさんがこの家の匂いに囚われないように、残り香を取ってあげるんだよ」
おばあちゃんはそう言いながら、静かに踊り続けた。
私はその傍らで、上っていく線香の煙を、ずっと見ていた。
その他
公開:18/08/18 00:51
更新:18/08/18 00:52
スクー 白い蚊取り線香

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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