ミツバチと花

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 気づけば私はそこにいて、初夏の陽光に照らされていた。
 そこには、私と同じくちなし色の花弁をもつ花が咲きこぼれていた。かつては瑞々しく光輝を放っていたそれも今や萎れ、ところどころ黃枯茶色に変色しているものもあった。
 私もまた、身躯から力が抜け、眼瞼が重くなるのを感じていた。
 ふと仰いだ太陽の光輝が、彼の翅にどこか似ている気がした。
「こんにちは」
 頭上から声がした。見上げると、縞模様の身躯と、陽光に反射してきらめく半透明の翅が眼界に入った。
「また来たの」
「近くまで来たからさ」
 そう言って、彼は花唇をやおらになでた。
 その感触が記憶を呼び起こし、眼前に鮮やかによみがえる。初めて会った日のこと、旅の話をしてくれたこと、花唇の色をほめてくれたこと――。
 私は重い眼瞼をとじた。暗闇の中でも、どこかあたたかい光が私を包みこむ。私の意識が、彼の腕の温度に溶け合っていくのを感じた。
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公開:18/08/17 19:48
北オーストリアの農家

青木ウミネコ( 東京都 )

二十代半ば、会社員のかたわら執筆しています。
まだ拙い部分もありますが、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。

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