虹色ロケット

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「に~じや~っ」
 花火の定番フレーズの口調で、地元の子供がはしゃいでいる。
 わしが打ち上げたロケットは青空を飛び、その噴射口からは綺麗な虹を描いていった。
 今年もお盆の季節が来たんだな、とわしは実感していた。
 お盆の季節になると、この町では不思議なロケットが飛ぶ。きっかけは、嫁が亡くなったことだ。嫁が最後に残した「綺麗な虹を見たい」という言葉を叶えたくて、わしはこのロケットを開発したのだ。
 初めて飛ばしたときは大騒ぎになった。でも、綺麗な虹はすぐに評判になり、メディアが取り上げて有名になった。それからは、このロケットへの非難がなくなった。
 嫁がどうして虹を見たいと思ったのか、当時は分からなかった。頭がボケたのかと思った。でも、いまは嫁の優しさだと分かった。嫁はひとり残されるわしを心配して、あんな虚言を言ったのだろう。
 わしは多くの人に囲まれながら「に~じや~」と呟いていた。
SF
公開:18/08/18 21:08

ミジカチャウダー( 地球のあのあたり )

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@ogamatoniku_t

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