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                                結婚式を一週間後に控えた休日。私は一人、夫の実家を訪れていた。
お姑さんに少し寄ってほしいと電話をもらっていたからだ。
「有希ちゃん、これ受け取ってくれる?」
「蚊取り線香、ですか?」
お姑さんが取り出したそれは、渦巻き型の見慣れた形をしていた。
けれどその色は、緑ではなく純白だ。
「昔はね、結納のときに一緒に納めていたのよ。あなたたちが神前式でお式を挙げるって聞いたから、焚いてほしくてね」
そう微笑んだお姑さんは、白い蚊取り線香を私へと手渡した。
なんでも、式の前日までに白無垢へ移るように線香を焚くと、悪い虫を祓ってくれる、という言い伝えがあるらしい。
私は新居へ帰ると、早速お姑さんに習った通りに白無垢を焚き込めた。
線香が短くなるにつれ、だんだんと普通の蚊取り線香とは違ういい香りが部屋中に立ち込めて、私は清浄な気持ちに包まれた。
その晩、夫はうなされるように寝込んだ。
    お姑さんに少し寄ってほしいと電話をもらっていたからだ。
「有希ちゃん、これ受け取ってくれる?」
「蚊取り線香、ですか?」
お姑さんが取り出したそれは、渦巻き型の見慣れた形をしていた。
けれどその色は、緑ではなく純白だ。
「昔はね、結納のときに一緒に納めていたのよ。あなたたちが神前式でお式を挙げるって聞いたから、焚いてほしくてね」
そう微笑んだお姑さんは、白い蚊取り線香を私へと手渡した。
なんでも、式の前日までに白無垢へ移るように線香を焚くと、悪い虫を祓ってくれる、という言い伝えがあるらしい。
私は新居へ帰ると、早速お姑さんに習った通りに白無垢を焚き込めた。
線香が短くなるにつれ、だんだんと普通の蚊取り線香とは違ういい香りが部屋中に立ち込めて、私は清浄な気持ちに包まれた。
その晩、夫はうなされるように寝込んだ。
        その他
      
      公開:18/08/18 19:46
更新:18/08/19 22:48
    更新:18/08/19 22:48
                  スクー 
                  白い蚊取り線香 
              
    高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。
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                ゆた