愛を知らない恋人

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私は愛がわからない。
私には恋人がいる。
いつもわたしに愛を囁く優しい恋人が。
隣を向けば微笑みかけてくる。
好意はあるのだ。それでも私にはわからない。
「好きだよ、愛してる」
その瞬間、薄い膜が彼との間を遮るのだ。
薄い膜越しで、ぼんやりと彼の言葉が鼓膜を震わせる。
それでも彼に応えるため「愛してる」と膜越しに答えた。

僕には恋人がいる。笑顔が素敵な恋人が。
隣を向いて微笑みかける。好意はきっと伝わっている。
それでも彼女には愛がわからない。
「好きだよ、愛してる」
その瞬間、美しいシャボン玉のような膜が彼女との間を遮る。
僕の言葉が膜を波打たせ、淡く七色に煌めかせる。
思うにこれは、純粋で美しいものだけに囲まれてきた彼女を守る鎧なのだ。

慈しみ、愛おしみ、傷つき、憎み、それでも求め合う。
「愛」は美しいものばかりでは無い。

今日も彼女の「愛してる」がぼんやりと僕の鼓膜を震わせた。
恋愛
公開:18/08/16 10:37
更新:18/08/23 23:19

mono

思いつくまま、気の向くまま。
自分の頭の中から文字がこぼれ落ちてしまわないように、キーボードを叩いて整理整頓するのです。

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