「ジンジン」

壬生のサルさんのところの、正確には、壬生町おもちゃ博物館の雑木林のセミは依然として、一生懸命に「ミンミン」と鳴き続けているが‥‥。
戦国時代「三英傑」と呼ばれた内の一人である、かの天下人が、夏の最中、原因不明の病で苦しんでいた。傷はどこにもないのに、右腕の肘から先が、まるで刀で斬られたように「ジンジン」疼いて仕方がない。そんな折り、城の庭からセミの鳴き声が聞こえ、その疼きに拍車をかけた。鳴き声は「ジンジン」
その窮地を脱する為に、一人の天才医師が呼ばれた。その名は舞楽 寂（ぶらく じゃく）
天下人からの命は、
「あのセミの鳴き声を変えよ。新たな鳴き声は、万人に見向きもされぬよう、見ん見ん『ミンミン』とな。二日でせい」
この無理難題を、寂はやってのけた。
翌年、天下人討たれる。歴史上つとに名高い「大阪夏の陣」で。既に死因は判明しているが、セミのたたりも、あったのかもしれない。「ジンジン」