尻の根

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いい風だ。猛暑が続いたが盆休み最終日には多少落ち着いた。河原でランチなんて彼女の提案に乗り気になれなかったが、風の流れる木陰は思いのほか過ごしやすかった。
唐揚げを摘まんでおにぎりを齧る。冷たい烏龍茶で一息。河辺には人工池で釣りをする少年。ミニチュアダックスにボールを投げるスキンヘッドの巨漢。多くのヒトが思い思いに過ごす。俺は陸橋を渡る列車を指差し、今年の春から運行された新型だなんて蘊蓄を垂れた。
明日からまた仕事だが、二日もすればすぐ休み。連休明けはこんなスローテンポが丁度いい。
「お尻に根っこが生えちゃったんじゃない」
「かもね」と鼻で笑う。
少年がミニチュアダックスを抱えあげた。彼らは親子だったのか。
「そろそろ行くわ」
彼女は立ち上がり巨漢と少年に手を振った。驚いて立ち上がろうとするが、尻にはびっしりと張られた根。彼女は振り向き微笑んだ。
「たまには水をあげにくるからね」
ホラー
公開:18/08/15 15:30
更新:19/02/23 18:18

puzzzle( 神奈川19区 )

作文とロックンロールが好きです。
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