人肌小石

裏道商店で買った、手の平サイズの白い小石。一つ3500円。正直ぼったくり。でもいい。とても滑らかで安心するの。その名も『人肌小石』。触るとひんやりしてて、段々人肌に馴染んでくる。少しずっしりしているのが、誰かの手の温もりみたいで安心する。おでこやお腹に当てると、母の温もりを思い出す。胸や太ももに置くと、元彼を思い出す。先日、体の相性を理由に別れを告げられた。人間はこりごりだ。話さない小石が丁度いい。

俺は化け狸。人間社会はこりごりだ。使うだけ使われて、使い倒したらさよならだ。俺はもう人間をやめた。だから知り合いに頼んで売ってもらった。その名も『人肌小石』。我ながら疲れた名前だ。どうせ飽きたら捨てられる。そうしたらまた来るから売ってくれ。7:3で構わない。最初の客は女だ。滑らかで気持ちいい。束の間の休息だ。だけど、なかなか捨てる様子がない。大事に大事に撫でられて、居心地よくてかなわない。