真夏の陽炎

16
45

その日はカンカン照りで、外を歩いていると太陽にさらされてる肌がヒリヒリするぐらいだった。僕は家の前の大通りを自転車で飛ばしていた。いつも渋滞する大通りは今日も車がいっぱいで、僕は動かない車の列をスイスイ追い越していく。
まるで他にやることないみたいに喧しい蝉の声が、暑さを後押ししてるみたいだ。
焼けるアスファルトから、ゆらゆらと陽炎が立ち上るように見え、急に蝉の声が止んだ。僕は不安を覚え、自転車を止めた。汗がダラダラと吹き出す。

道路からは渋滞の車がいつの間にか消え、黒い服を着た人の列が道を埋め尽くしていた。テレビで見たことある。これは葬列だ。長い長い葬列が、見えないぐらい遠くまでどこまでもどこまでも続いていた。

それは瞬きの一瞬ぐらいで消え、いつの間にか蝉の声も車も戻っていた。あれは、過去なのか未来なのか。
雲1つない空から、風船だろうか。ふわりと何かが下りてくるのが見えた。
その他
公開:18/08/15 00:25
更新:18/08/15 00:27

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容