天の国
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今から数十年前。私はどうにか音楽の道を進もうと、僅かばかりの伝手だけを頼りに海を越えた。
何気なく選んだ留学先の街は、同じ夢を見る若者達の才能の輝きで満ちていた。私には過ぎるほどまぶしい世界だった。
だからだろう。ある朝、私の心はふいに挫け、私は衝動のまま街を飛びだしてしまった。
鈍行を乗り継ぎ、4時間。そんな旅路の途中、私は一棟のアパートメントと出会った。
のどかな田舎の、2階建ての青い建物。庭にはちいさな黄色い花をつけた木々らが、アパートを彩るように、溢れんばかりに咲き乱れていた。
「うつくしいな、」
「でしょう?」
思わず感嘆の声を溢すと、背後から同意の声がかかった。振り返ると、生姜色の髪をした少女が笑っていた。彼女もまた、美しかった。
「あぁ、本当に……」
誰とも比べられない場所に行くつもりだった。けれど私の為の天の国は、私を生かすように門を開けていた。
何気なく選んだ留学先の街は、同じ夢を見る若者達の才能の輝きで満ちていた。私には過ぎるほどまぶしい世界だった。
だからだろう。ある朝、私の心はふいに挫け、私は衝動のまま街を飛びだしてしまった。
鈍行を乗り継ぎ、4時間。そんな旅路の途中、私は一棟のアパートメントと出会った。
のどかな田舎の、2階建ての青い建物。庭にはちいさな黄色い花をつけた木々らが、アパートを彩るように、溢れんばかりに咲き乱れていた。
「うつくしいな、」
「でしょう?」
思わず感嘆の声を溢すと、背後から同意の声がかかった。振り返ると、生姜色の髪をした少女が笑っていた。彼女もまた、美しかった。
「あぁ、本当に……」
誰とも比べられない場所に行くつもりだった。けれど私の為の天の国は、私を生かすように門を開けていた。
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公開:18/08/14 08:20
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