僕からすると

　うん。僕は、親父に言われたようにこの家を継ぐよ。僕には弟がいるんだけれど、弟は「違う世界が見たい。」とか言って、旅行鞄を担いで随分前にいなくなった。だからもう僕はここにいて、跡を継ぐより他はないんだ。弟は本当に自由な奴で、僕にとっては“迷惑で自分勝手な奴”さ。
　ところでそっちから見ると、僕ん家はどう？そうかぁ。君もまた、あの画家さんの腕に騙されたんだね。それもまぁ、仕方がないさ。その枠の外からこちら側の風景を見ている君と、この家の窓から君を見ている僕とでは、見える景色がまるで違うもの。でも一つだけ覚えていてほしいのはね。君がその切り取られた風景を見て、美しいと感じるからって、まさしくその風景の中に住む僕を幸せだとは決め付けないで欲しいって事。あ！君の隣に来たそのおじいさん。僕の弟さ。ほら、故郷が恋しくて今度は泣いてやがる。勝手な奴。僕はあの画家さんに描かれた時からこのままだってのにさ。