思い出ローソク

「思い出ローソク」キットを買った。おばあちゃんの米寿の祝いにプレゼントしようと思って。
おばあちゃんが大切にしている思い出って何だろう。おじいちゃんとの日々かな、それとも子供や孫と一緒に過ごす時間？
ここは直接聞いてみよう。それで、おばあちゃんに聞いてみた。

「思い出ローソクを作ろうと思うんだけど、おばあちゃんの大切な思い出が写ってる写真ある？」
すると、おばあちゃんは札入れの中から一枚の古ぼけた写真を取り出した。
一人の青年が写っている。おじいちゃんじゃなさそうだ。もしかして…？
「(笑)おばあちゃんのお兄さんの写真だよ。戦争で亡くなった。子供の頃、それは仲良く遊んでもらったのさ」
私はその写真をコピーし、思い出ローソクの芯に使った。

ローソクに火を灯す。
ゆらゆらと揺れる影の中に、仲良く遊ぶ少女と青年の姿が映し出された。
おはじき、お手玉、縄跳び。
いつまでもゆらゆらと映り続けた。