声のつづき

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どこか遠くへ行きたかった。私を知る人が誰もいない土地。具体的な場所を聞かれても答えられないくせに。特にあそこがいいとか、そういうわけじゃないんだけどなと思いながら口にすら出さず、何年が経ったのだろう。一生それでいいのかって根拠のない叫びを無視するのは難しくなかった。

ある朝、不思議なことが起こった。天から少年が降ってきたのだった。少年は切れ長の目をきっと上げて怒ったような表情だけれど、美しい顔立ちをしている。薄い唇が開く。

「さっさとドイツへ行け!」

声。目の前には見慣れた部屋が広がっている。目覚まし時計が5時55分を指す。そうして私はあの声と同時に勢いよく体を起こして目覚めたのだと気づく。誰の声だったのか思い出せない。さっさとドイツへ行け。それだけが手がかりだった。

ドイツに何があるんだろう。私はどうなってしまうんだろう。わけもわからないまま、私の手はパソコンを開こうとしている。
その他
公開:18/08/14 17:48
更新:18/08/14 17:56
小説 ショートショート 400字物語 一話完結

yuna

400字のことばを紡ぎます。

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