置き手紙

私はこれから旅に出ます。だれにも行き先は言いません。自分自身にも分からないので、言いたくても言えないのです。

あなたには、1枚の絵を預けていきます。うっそうと茂った新緑に目がくらむ1枚を。無遠慮な太陽の光にさらされ、優しさを忘れた雨風を受け、本来の色から離れてしまった浅葱色の家屋がのぞくーーこの絵をあなたに持っていてもらいたいのです。

あなたにとって私は、人生の通過点に過ぎなかったでしょう。だからどうしてこんな絵を自分に託すのか、さっぱり分からないかもしれません。

それでも私はあなたにだけ明かします、この絵の秘密をーーこの絵のなかには、あなたが何よりも欲しているアレがどこにあるのか、ヒントが隠されているのです。

ですがそのヒントが何なのか、私はいつかあなたの元に戻るまで言いません。ですからあなたは私が戻るまでに自力で見つけるか、私を待ち続けるかしかないのです。グッドラック