しがらみ

待って！待ってよ！何で僕を置いていくの！君は僕とずっといてくれるって約束したよね！
なのに何で僕の前から去ろうとするの？何で全て捨てていくの？
悔しい。悲しい。彼女の全身に絡みついた糸は今にも全てが解けそうだった。
…そうか…君はそうやって全てをなかったことにしているんだね。
じゃあ、僕もこれまでの全てをなかったことにするよ。
僕はありったけの力を込めて彼女の首に糸を巻き付ける。
愛しい人の手を取り、嬉しそうに駆け出す君の顔が急に強張る。
僕は力を籠め、糸を引き絞る。
…彼女は力なく倒れた。
これが僕の本当の力さ。
しがらみ。流水をせき止めるもの。束縛したり、邪魔をするもの。
今までの僕は君と一緒にいたくて、ずっとこの場所に束縛していた。
でも今の僕は束縛を破り、流れる水のように走り出した君の息の根を止める。
どちらもしがらみたる僕の力だ。
止まった水は僕の下へ。これからもずっと一緒だよ…