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小さい頃から私は怖がりだ。布団の中に潜ればいつも恐ろしい夢を見せられた。
言葉に表せないほど醜く大きな牙を持つ怪物に右も左も分からない暗闇の中を追いかけ回されたりした。
でも今では追いかけてくるのは会社の上司。晩餐会に招待してくるのは数日前に絡まれた酔っ払いだ。

「何故、前まではとても恐ろしかったのに。これじゃあ現実と何も変わらないじゃないか!」

私は夢の中にしてはハッキリとした意識を持って叫んだ。
すると彼らの体はみるみる黒に侵食され、泣き崩れるように形を失っていった。

『だって、キミは仕事仕事って何も考えなくなった。空想も、冒険も、好奇心すらどこかに投げ捨てた。キミは現実しか見ていない。だからボクらも怪物がどんな形をしているか忘れてしまった!』

私もなんだか悲しくなって泣いてしまった。
ファンタジー
公開:18/08/12 15:57

sh1g0nodre1m@gmail.com

不思議と不気味が大好きです!
ちょっと変わったお話を中心に書いてます。

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