額縁屋

額縁屋は激怒した。
「名画を名画たらしめるもの。それは額縁だよ。現実と、「絵」という自由な精神世界を「額縁」がくっきり分けることでさらに絵画は輝くんだ。この絵だってそうさ。ただの白地にアップされてちゃ魅力の一部しか伝わらんよ。どんなものが合うかなあ。色々な想像をさせてくれる良い絵だよ、ほんとに。全体の雰囲気を殺さないよう緑を基調にしたらどうだろう。逆に金色なんて世界観が際立っていいかもしれないな。君はどう思う。　・・・茶色？いやいや、無難すぎるよ。何にでも合うってのは要するに怠慢だよ君。そもそも額縁というのはねえ、数万年前の洞窟壁画にルーツを見られて・・・・」

気軽に話を振ったら大変な目にあった。しかし、なるほどと思うところもある。
次は世界の額縁を眺める展覧会でも企画してみようかと提案した。

額縁屋は激怒した。

それでは額縁が主役になってしまう、と。
いやはや芸術は難しい。