スコアボード

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むせ返る熱気。鳴り響くブラスバンドと応援の声。
頭から流れる汗を肩で拭い取りながら、マウンド上の俺はボールを握り直した。
スコアボードには、九回裏二死満塁、一点差の表示。
相棒のサインに二度首を振ってから頷くと、振り抜いた俺の指から離れたボールが、相棒のミットの手前で高い金属音を響かせる。
「ああ、いった」と肌で感じて、俺は拳をぎゅっと握りしめた。

瞬間、全てが停止した。

ブラスバンドの音、バッター、球審、相棒、ベンチ。
バッターが打ったボールまで、打たれた衝撃で歪んだまま宙に浮かんでいた。
今、少しでも打球に触れれば、ホームランはレフトフライへと姿を変えるだろう。
けれど。
俺は止まったボールからそのまま目線を上げて、青く広がる空へと視線を移した。
その全てを体に刻み込むように、大きく息を吸い込み、ぎゅっと握った拳を開く。


一拍の沈黙ののち、ワアッという歓声が再び俺の肌を叩いた。
青春
公開:18/08/12 07:11
更新:18/08/12 13:11

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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