モシャ弁

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最近うちのお母さんは、モシャ弁にはまっている。キャラ弁じゃない、モシャ弁だ。
モシャ弁は、文字通り絵画を模写したもので、キャラ弁を喜ばなくなった成長した子供を持つ母親たちの間で、にわかに流行っているらしい。
今朝も、お母さんがモシャ弁をはじめてから買った額縁風弁当箱を、「今日のは自信作よ」と満足げな笑顔で渡された。
これを昼休みの教室で広げること自体も、相当に恥ずかしい。
包みをほどくと、「北オーストリアの農家 グスタフ・クリムト作」とそれっぽい紙が添えられた、風景画っぽいお弁当が見えた。真ん中にある水色の四角は、考えたくないけど多分、チョコミント生地のなにかだろう。
蓋を開け、嘆息しつつお弁当面積の半分以上を占めるパセリをつつく。すると木の幹にされていた魚の顔部分が出てきて、私は小さく悲鳴を上げた。
「なにこれ……」
呟くと、覗き込んだ通りがかりの男子がポツリと溢した。
「鱚だな」
その他
公開:18/08/13 07:33
更新:18/08/13 16:07
おふざけコンテスト 鱚(キス)

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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