条件つきの家

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「この家に住むだけでいいんですね?」

私はもう一度その女に訊いた。

「そうよ、この家に住んで、普通の生活をただ送るだけ。生活費は事前にある程度渡すし、足りなくなれば連絡して。ただし名前は別のに変えてもらう」

元々人付き合いは苦手だ。私の罪がそれだけで消えるのなら、名前ぐらいいくらでも捨ててやる。

私は女にうなずくと、差し出された簡素な分厚い封筒を受け取り、中身を確認した。この国の平均収入のざっと倍、といったところか。

「……もうひとつだけ、条件があるの」女は私が封筒の中身を確認しているタイミングで、ゆっくりと言った。
「地元の集まりには必ず参加して、近所の人たちとよく交流し、地域の一員として積極的になじむこと」
「……それが条件?」
「そう。それで終わり。いつも笑顔を絶やさず、良い人でいて」

女が去った後、パニックになった私は次のドアノックに怯えながら冷めたコーヒーをすすった。
ミステリー・推理
公開:18/08/11 19:04
更新:18/08/14 15:54

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