鼻から

16
48

いつも冴えない格好をしていた友人が、久しぶりに会ったらやけにこざっぱりと格好良くなっていた。
「彼女が出来たんだ」
友人の鼻が自慢気に膨らむと同時に、鼻の穴からツーと1本の鼻毛が下りてきて、そこに小さな人がぶら下がっていた。小さな人は片方の手が鋏になっていて、器用に友人の鼻毛やひげ、眉毛を整えていった。見えていないのか、友人は全く気付く様子もない。
「おい、お前。その鼻の」
僕が友人に尋ねようとすると、小さな人は此方を振り返った。そうして僕の顔を見るととんでもないものを見たようなびっくりした顔をして、慌てて友人の鼻の穴に戻り、小さな鞄を背負って出てきた。そうしてまた友人の鼻毛にぶら下がると、勢いをつけてターザンみたい僕の顔を飛び移り、鼻の穴へと消えて行った。

その後、僕に彼女が出来たのは言うまでもない。
その他
公開:18/08/11 14:56

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容