「一日」を売る時計屋

男はある不思議な時計屋を尋ねた。
ここに時計屋に頼めば『一日』だけ時間を買えると聞いた。

「あの、『一日』だけ時間が欲しいのですが」
「承知しました」

店員は慣れた手つきで小さな時計を男に手渡した。
そう、この時計さえあれば仕事だろうと大切な用事だろうと一日だけ先延ばしにできるのだ。
男は自宅に帰りこの時間をどう使おうか考えた。

「久しぶりにウィンドウショッピングをしようか。雑貨店や本屋が良いかな。いや、酒やらつまみやら買ってゆっくりと映画を観て過ごすのも悪くない。それともいっそのこと映画館に行ってくるのもありだ。しかしレンタルして自宅で観た方が楽しいかもしれない。ううむ、どうしたものか……」

＿＿男は気づけば自分が寝てしまっていたことに気づいた。
ふと小さな時計を見ると既に24時間を過ぎようとしていた。

「何てことだ、一日を無駄にしてしまった！」