歯応えのあるリンゴ

お隣の奥さんは少し変わった人だけど、義理のお母さんが農家の方のようで、毎年果物のお裾分けを下さる優しい人だった。でも今年は少し首を捻ってしまった。
「押し付けがましいようでいつもすみません」
「いえいえ！寧ろよくして頂いて……」
そんな挨拶をしながら、箱の中身から目を離せなかった。なんだろう、リンゴのようだが少しゴツゴツしている。
「柘榴みたいでしょ？タネも食べられる新種のリンゴなんです」
そう言って奥さんが一口齧る。パリッ
といい歯応えが音から分かる。断面を見ると、種の様なものが見えるがそれらは白く柔らかそうだ。香りも芳醇で美味しそう。
「お口に合うかどうか……」
「いつもありがとうございます」
さっそくリンゴを冷蔵庫で冷やした。夫と食べる為だ。
「新種のリンゴですって」
旦那と一つずつ、そのまま齧ってみた。がりっ。旦那は眉を潜めた。
「これ、歯じゃないか？」
本当だ。奥歯まで揃ってる。