冷やしたぬき

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それが俺。あだなだとかそんなことではない。実際、俺は冷えた汁に浸り、頭から天かすが散らされている。茹でられ冷水でしめられたばかりの俺は、その短い存在と時間を了解する。割り箸と一緒にお盆の上に差し出されたならば、一本一本が誰かの口の中へと啜り上げられていく。そして、うどんと一緒に飛び出した天かすがコリコリと音を立てるだろう。冷やしたぬきの醍醐味は歯ごたえのある天かすにあると思うよ。だから、なるべく早く平らげたほうがいい。音も気にせずズリズリと啜り上げればいい。欧米人は行儀が悪いと言うけれど、そもそも麺を啜るテクニックを持ち合わせていないのだ。啜り食いをして来なかったのだから仕方ない。冷やしたぬきを啜れる人生と啜れない人生のどちらが豊かであるか。その答えはお盆を持った君の瞳の輝きが物語っている。さあ、召し上がれ。そして、最後の天かすまでが君を満たした時、俺は冷やしたぬきを全うするのだ。
ファンタジー
公開:18/08/11 10:00
更新:19/02/23 18:19

puzzzle( 神奈川19区 )

作文とロックンロールが好きです。
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