旅立ち

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わしの命はそう長く持たん。
自分がいちばん、分かるんだ。
君は最後まで本当に良くしてくれたね。
そんな君に看取ってもらえて、今は幸せだよ。

そういえば、今は亡き黒の愛猫が旅だった日も、今日のように穏やかな風が吹いていたな。
覚えているかい?あの子の旅を手助けするような優しい風を。

あぁ、最後にひとつ君に頼みたい事がある。
わしが死んだら、どうかこの絵を一緒に棺に入れてほしい。
わしの家を描いたこの絵と、共に生きてきたようなものだから。

おや、これは何だろう。
ここにシミなんて無かった筈だが。
そうか・・・。
迎えに来てくれたのかい。
あぁ、随分と長い間待たせてしまったようだ。
さぁ行こうか。
じゃあ行ってくるよ。


「ごめんなさい。お気に入りの絵に手を加えてしまって。でもね。」


「ようやくこれで、この絵は完成したわ。そうでしょ?」

庭の方から猫の鳴き声が聴こえた気がした。
その他
公開:18/08/10 15:26
更新:18/08/15 23:03
#名作絵画 #クリムト #北オーストリアの農家

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