人の話を聞かない内線電話

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人の話を聞く内線電話『聞く子』が私の会社に導入された。#99とダイヤルして聞く子を呼び出せば、社内情報を全て記憶している彼女が、どんな内容でも、それを知る最適な人物に内線電話を繋いでくれるのだ。
導入後、業務が円滑になったと評判だった。が、庶務課の知恵袋と呼ばれている私には迷惑でしかない。一日に何十本も電話がかかってくるのだ。
私は聞く子に「何でも私に押し付けないで」と文句を言うと、彼女は癒しボイスで『ごめんなさい』と素直に謝った。
次の日。内線電話がピタリと止んだ。それはそれで寂しい。私は再び彼女に電話した。
「誰に繋いでるの?」
『私が代わりに答えてます』
「なら最初からそうしてよ」
しかし数日後、聞く子が機密情報を流出させたとして撤去されてしまった。何でも答えすぎたのだ。
静かなデスクで私はため息を漏らす。
「聞く子と話したいな」
しかし、新しい内線電話はもう私の話を聞いてくれない。
SF
公開:18/08/07 23:32
更新:18/08/10 00:03
スクー

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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