金魚姫

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私には、お気に入りの空間がある。

都会の節操が見下ろせる
ホテルの最上階スイートルームに
あり、
そこには、色鮮やかに空間を漂う金魚達が…。


大人は、触れることができない。それでも私は、ほぼ満足だった。

唯一、まだ見ていない金魚がいた。

支配人はそれを「金魚姫」と呼んだ。
金魚に触れると、目に浮かぶそうだ。


今夜は特別に、娘を連れてきた。

娘はさっそく、金魚に触れた。
突然、部屋は幻想的な光を失った。

娘は
「金魚のお姫様でできた」
と言い、何かと戯れている。

私は我慢できなくなり思わず、娘に触れた。
すると幽かに金魚姫とやらが目に浮かんだ。


金魚姫は私に
「また会えたね」と語りかける。
親子の周りをゆっくりと優雅に泳いだ。


娘は、これからも
この記憶を忘れないだろうか。


スッと消えた金魚姫。
2人は時空を越え
ひんやりと温かいこの思い出を
置き去りにした。
ファンタジー
公開:18/08/07 18:02

かめかもめ

ほどほどに文学好き青年
ショートショート初心者
和の精神を愛しています

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