幻想動物見物録・玄也の場合
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ギイと音を鳴らす木には近づくな。枝が落ちて当たれば死ぬぞ。そう言われて育ちましたが、ありゃ間違いだと俺は知っていました。音を鳴らすのは木ではなく、アイツだってね。なんなのかは知りません。黒い甲虫の革でできた『6』みたいな形したやつです。大人には見えないようだったので、俺は頭の中で「ぎい」と呼んでました。何せアイツの落とした枝で俺の親父は死んだんでね。恨みはないけど、なんでそんなことするのか気になって。見てたら分かりました。ぎいは泣く音でした。今にも折れる木の痛みと、それに当たる人間を悼んで泣くんだ。涙を零して枝を接着しようとする様子が、風に負けて折れる枝に見える。ぎいが耐えられない時悲劇が起きる。そういう仕組みだ。
だから樹木医になりました。便利ですよ、ぎいが見つけてくれるから。手遅れな枝を折る時は、説得に骨が折れますがね。
え?先生、ぎいは未だに泣きますよ。そばに行くと泣き止むけどね。
だから樹木医になりました。便利ですよ、ぎいが見つけてくれるから。手遅れな枝を折る時は、説得に骨が折れますがね。
え?先生、ぎいは未だに泣きますよ。そばに行くと泣き止むけどね。
その他
公開:18/08/07 17:01
『痛みを悼む影』
共生と共棲
幻想動物見物録
400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。
無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
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『枇杷の独り言』
ショートショートコンテスト『家族』最優秀賞頂きました。
写真は全て自前でやっています(笑)
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