ナスナ山

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ナスナスナスナスナスナスナスナス
広大な砂漠で、一匹のナスが鳴いている。旅人の落し物か、はたまた置き去りにされたのか。助けを求めて鳴いているのか、自らの不遇を嘆いているのか、それを知るのはナスのみだ。
さらさらさら〜
ナスに砂が集まって行く。自然の風に煽られたように、軽やかに艶やかに集まっていく。きっと砂たちは、ナスが、スナスナ、と鳴いているように聞こえたのだろう。しかし、私からするとナスはナスナスと鳴いている。どう考えても、ナスナス、と鳴いている。恐らく砂以外の森羅万象はナスナスと鳴いていると判断するだろう。砂の自意識過剰さが伺える。あっという間にナスは姿を消し、小さな砂山ができた。長い年月が過ぎ、砂山は富士山ほどの大きさに。圧力により石化。岩山となった。人々はこれを、ナスナ山と名付け崇め奉った。
しかしこれは、ナスが鳴く世界での話である。現実では、ナスは鳴かナス。
ファンタジー
公開:18/08/09 04:45

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