観察者

ショートショートのネタをいつも探している。描き始めたころには次々と浮かんでいたネタももはや枯渇してしまった。せっかくふっと浮かんできたネタも実はどこかで読んだ作品の焼き直しになってしまっていたり、名作だ、と思っていたネタが翌日読むととてもつまらなかったり。
アパートの隣室に新しい入居者があった。彼から何か盗めないか、必死に観察を続けた。夜遅くにどこかへ行き、朝早くに戻ってくる。日中は部屋で何かの作業をしているらしい。そんな日が何日も何日も続いた。何も面白い発見はなかった。わかったのは表札にある彼の名前だけだった。

ある日、日課のショートショート投稿サイトの作品を閲覧していると、隣人の名前を見つけた。作品の名は『観察者』。近所の住人の生活をじっと観察する気色の悪い男の話だ。彼はこんな作品を書くのか…もっと観察せねばなるまい。