2
37
目の前にロッカーがありました。小学校の教室の後ろにあったみたいな木のロッカーです。すごく大きくて、右も左も上も、見えないくらいまでロッカーが続いています。私は何かを探していたんですが、自分のロッカーを探していたわけではないんです。ロッカーにはいろいろなものが入っていました。笛、ランドセル、体操着袋、絵の具のバケツ、タオル。でもからっぽのロッカーもあるし、何かべとべとした物が滴るロッカーもありました。上の方だったかな。私はそこをずっと見ているんです。探していたロッカーじゃあないんです。でもそこに、何か髪の毛みたいなものが少しだけ見えているロッカーがあって、そこから目をそらすことができないんです。怖いとか、気持ちわるいとかいう気分じゃないんです。ただ「見つからない」っていう不安がずっとあって、早く見つけないと、と思っているのに、そのちらっと見えている髪の毛から目をそらすことが出来ないんです。
ファンタジー
公開:18/08/06 18:54
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
ログインするとコメントを投稿できます