イモ縛り

「食べ物を粗末にすると、バチが当たるよ」小さい頃、母さんによく言われた。
その日の食卓に、大嫌いなサツマイモが出た。僕は、庭に投げ出して、グチャグチャに踏んずけた。
その日は、いつもより早くベットに入った。身体に異常な重みを感じ、目が覚めた。サツマイモが僕の上に跨っている。死んだ魚のような目と、縦に大きく裂けた口。
「イモ食わねえか」腹に響く低い声で僕に言う。「食うもんか」と言いたいけど、声が出ない。「食わないんなら、俺がおまえを食うぞ」縦に大きく裂けた口が、更に大きくなった。
必死にもがいても、どうしても抜け出せない。僕は覚悟を決めた。声が出ないので、スマホのメモ帳にこう入力して、サツマイモに見せた。「食べるよ」すると、煙のようにサツマイモは消えた。
朝起きて母さんに言った。「イヤな夢見たよ」振り向いた母さんの顔は、サツマイモだった。野太い声で母さんが言う。「バチが当たったね」