レイニーオレンジ

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雨が降らないようになって何年かが過ぎた。
人々はもはや、雨がどんなものだったかも忘れかけていた。

夏のある日、一滴のオレンジジュースが誰かの肩に落ちた。
また一粒、今度は別の誰かの頬をかすり、その人が空を見上げた時にはざーざーと、たくさんのオレンジジュースが降り出した。

子どもたちは庭に出て、口を目一杯あけて落ちてくるオレンジジュースを飲んでいる。
あるお爺さんは、どうせなら酒がよかった、なんて言いながら喜んで口をあけている。

冬になると、オレンジシャーベットが深々と降り出した。

そのうち大気汚染の影響で、オレンジジュースは酸性味を帯びた。
ファンタになった、ファンタになった、と高校生たちが大喜びしている。

そんな現象も、ある日突然、前触れもなく終わった。

次は何が降るだろう。人々は予想やら期待やらを口々に言い合う。

その光景を、空からオレンジのような太陽が眺めていた。
ファンタジー
公開:18/08/06 23:20

会沢昇太郎

ショートショートをロングロング愛しています。女性の髪はショートかセミロングが好きです。

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