額縁を跨ぐ

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森の中に埋もれるように建つ、青く塗装された板張りの小さな家。
玄関口のベル紐を引けば、カラランカラリと来客を告げた。
「どうぞお入りになって?」
奥から聞こえる女の声に、恐る恐る足を上げて一歩踏み出す。
リビングだろうか。広々としたダイニングテーブルには、白地のクロスに赤い木の実が点々と実り、常磐色の葉が茂っている。その奥に女が一人。
「時々、青い鳥達が食べに来るの。不思議よね?あの子達がいくら食べても、クロスからあの実が一粒たりとも無くなるところは見たことがないのよ?」
クロスに手を沿わせながら、おかしいでしょう?と問う彼女に答えず、乾いた喉を震わせる。
「貴女が家主なのか?」
ピタリと全ての音が止まった。鳥の声も、虫の羽音も、葉のさざ波さえもだ。
「そうよ、額縁の外から来たお客人。ここは私の家、私の世界。額縁を跨いで入るなんて行儀が悪かったけれど、ドアベルを鳴らしたところは上出来ね。」
ファンタジー
公開:18/08/06 23:07
更新:18/08/07 01:00

mono

思いつくまま、気の向くまま。
自分の頭の中から文字がこぼれ落ちてしまわないように、キーボードを叩いて整理整頓するのです。

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