予約の後輩、水瀬くん(6)

6
44

どうやら、予約申込書は正解だったらしい。
受け取った先輩は妙な顔をしたけれど、突き返されはしなかったし、捨てられることもなかった。
「水瀬。今日の飲み会、お前も出られるよな?」
「うん」
昼休み、幹事の同期が取っていた出欠確認の出席欄に先輩の名前を見つけて、僕は心の中で跳びはねる。
今日は業後も、先輩といられるのだ。それだけで、午後の積み重なった仕事も簡単に乗り越えられる気がした。
予約をしてから、前より先輩との距離は近づいたように思う。けれど同時に、僕はもやもやとした気持ちになることも増えてしまっていた。
最初は予約だけで安心できたのに、日を追うにつれ、もっと先輩と話したいとか、側にいたいとか、欲深くなる自分がいる。先輩が幸せなのが一番だと思う気持ちは嘘じゃないのに、隣にいたい気持ちが強くなる。

こんな自分本意な僕を先輩には知られないといいと思いながら、僕は昼の定食を口へ押し込んだ。
恋愛
公開:18/08/05 00:21
更新:18/08/07 22:47
予約の後輩くん →予約の後輩、水瀬くん 通し番号で交互に進みます

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容