天然災害注意警報

『天然災害注意警報が発令されました。人員は速やかに予測できる事態に備えて下さい』
「来やがったな……！」
事務課にいる全員のスマホにアラートが鳴り響く。ある者は気を引き締め、ある者は狼狽し、新入社員は戸惑っている。全く馬鹿げた警報だ。『予測できる事態』ってなんだ。予測出来無いから特別に“天然災害”指定されたんじゃないか！あらゆる災害に対して、我々は先人たちから受け継いだ知恵で今日まで対処してきた。しかし『彼女』に対しては、ーーマニュアルがない。絶望だ。
「データは別ファイルに避難だ！」
「ダメです！アップデートが重くてPCが起動しません！」
ガチャリと、扉が開いた。今日も笑顔の素敵な彼女だ。
「おはようございます、今日もよろしくお願いします！」
彼女が一歩進み出た瞬間、ピンヒールが配線を踏み抜き、PCがショートした。俺のだ。
愛らしい彼女のミスは、例外なく許される。
それが“天然災害”だ。