確実な幸福感

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私は亀だ。名前なんてない。動物園で飼育されているから一般名称は『ゾウガメ』。

私には誰にも知られていない秘密がある。
亀は一般的に足が遅いとされている。「歩みの遅い亀」「ノロマな亀」などと揶揄されて短い足をのそりのそりと歩む。がしかし私は違うのだ。
何を隠そう、私は「足が速い」のだ。

でもまだ誰もその事には気づいていない。気づいていないからいち早く餌に近づけいつも大量の餌にありつけるのだ。何か取り柄があるというのは素晴らしい。神様ありがとう。

飼育員にもまだ気づかれていない。気づかれてしまったら最後、マスコミのいいネタにされ、連日いい晒し者になることは間違いない。近所にいるレッサーパンダを見てればわかる。

私は静かな生活を好むのだ。小さな世界だが確実な幸福感。そしてこの幸福感こそが私の求めている「究極の亀性」なのだ。私は、私は、最高の亀なのだ。
ファンタジー
公開:18/08/05 21:45
更新:18/08/05 22:18

まりたま

いつか絵本を1冊出せたら...
そう思いながら書いてます。
少しだけホッコリしていただければ嬉しいです。
でも、たまにブラックも書きますけど。

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