スニーカーの怪

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赤いスニーカーを見かけたのは、友人の通夜だった。会場だった友人宅の軒先にポツンと置かれていた。
その後、私は通夜や葬式で同じような赤いスニーカーを幾度となく見かけた。それは必ず事故が原因で亡くなった場合で、私は不審を抱いた。赤いスニーカーの持ち主が、事故を装い殺人を犯しているのではないかと妄想をしたのだ。
その日、 家に帰ると玄関に赤いスニーカーがあった。似ている。私は妻に尋ねた。
「あの赤いスニーカーはどうしたんだ?」
「ああ、健のよ」
息子の?私は玄関に行き、赤いスニーカーを見た。やはり似ている。そしてなんとはなしに足を入れ履いた。その瞬間、私は玄関を飛び出し走り出していた。速い。風を切るスピードで走っている。あぁ、気持ちがいい。
前に踏み切りが見え、遮断機が下りるのが見えた。私は全速力で、走ってくる電車にダイブした。

赤いスニーカーは血飛沫を浴び、確かに笑いながら走り去っていった。
その他
公開:18/08/05 21:42

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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