いつかのアサガオ

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重い。両手に抱えたアサガオの植木鉢が、信じられないくらい重い。

ゴトン。手がすべった。僕の手を離れ、バランスを崩したアサガオは地面に不時着し、横たわった。

僕はそれをただ見つめていた。雑木林のセミたちが僕を強く攻めたてる。

「ちょっと!大丈夫?」

女の人は僕に駆け寄ると、手際よくアサガオを起こし、周りの土をすくい上げて戻して言った。

「植物ってね、生き物なんだ。だから大事にしてあげてね。重たいけれど頑張ってね。」

「ありがとう。」もう少し頑張ってみるよ。

僕は家に辿り着くと、倒れるように眠りについた。

風鈴の音で目がさめると僕は大人になっていた。小学生だった頃の夢をみていた。

ベランダには、いつか妻が買ってきたアサガオが弱々しく咲いていた。

「喉、乾いてたんだね。ごめんな、気づいてあげられなくって。」

「ありがとう。」
長く深いお辞儀をしながら、アサガオはそう言った。
青春
公開:18/08/05 18:39

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