まさか ウインナーコーヒー 一杯で

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僕はクリムトの壁画を鑑賞したあとに、カフェでアインシュペナーを飲みながら、ウィーンの街並を眺めていた。芸術を愛する地場のエネルギーが心地よい。だから小さなマホガニーの丸いテーブルの隣から「ハロウ。私も同じのを頼もうかしら」って声がするまで、僕は夢の中にいたのだった。「僕の国ではこれを、ウインナーコーヒーっていうんだけどね」慌てて笑いで返した。
翌日少女と、北オーストリアに向かった。田園に、青色のペンキを塗った美しい農家が点在する素敵な景色らしい。僕はゴッホの『黄色い家』を連想して、二つ返事でOKをした。
青色の農家に着くと、少女がドアを開いて、クラッカーと歓声が上がった。テーブルにはケーキと少女によく似た夫婦が腰掛けていて・・・。僕は、笑顔の少女の企みを知って、呆然としながらなぜかこの場を壊してはいけないと思った。それに。こんなふうにして一人旅が終わるのだと、大胆にも覚悟を決めてしまった。
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公開:18/08/05 18:00
更新:18/08/31 22:54

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