エリ・エリ・レマ・サバクタニ

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「信仰もいいけれど、それを失ったときのことを考えるとね。一度、依存した心が再び独り立ちすることの困難を考えると、つらく苦しい現世でも、信仰なんて代物に関わらないまま生きていったほうが、よほどマシだと思うね。それに、懺悔して償われ、祝福のうちに惚けているなんて、まるっきり痴呆だ。それは人の生きる姿ではない。人の抜け殻だ。
 日々の罪を些細なものにしてしまいたいから、原罪をでっちあげて、それさえ赦されればオールオーケー? 
 この苦悩や罪が赦されてしまったら、一体自分に何が残るだろう?
 僕は生きるように罪を犯しつづけるだろうし、罪を犯しつづけることで生きている。この重荷を失ったら、僕はもう僕ではいられない」

 そう言って欠伸をした彼の喉がこんな音を立てた。

「エリ エリ レマ サバクタニ」

 黄昏時の濡れた四車線道路の緩衝帯で、透明の十字架を背負ったもの同士が、互いを妬み、羨んでいる。
青春
公開:18/08/05 10:09

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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