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両腕をあげ、伸びをする。

うーんと弾けたっていい。
だって夏だもの。

人生初の飛び込み、岩の上、眼前は青い水の流れる川。

うるさい、心臓のおと。
ちょっと瞳が潤みそうになってきたから

深呼吸して、恐れをかき消すように、一気に飛ぶ。

風と重力を感じたと思ったら

まるで床に叩き落ちたような一瞬の衝撃と、

すぐ、ぐしゃりとめりこみ、どぼどぼ水と溶け合う感覚。

束の間、世界のどことも切り離されたような感覚に揺らぎ、そして、ぷはーと湖面に顔を出して息を吸い、体を浮かせ、水を掻く。

はぁ。最高だ。

目線を湖面に合わせると、目の前の川は太陽の光でキラキラと光っていて、ああ、素敵だな、と思った。

よし、もう一回。

しずくを体から滴らせて、岸に上がる。

まだ、

まだ、

まだ、

夏は始まったばかり。
その他
公開:18/08/03 08:51
更新:18/08/08 09:42

綿津実

自然と暮らす。
題材は身近なものが多いです。

110.泡顔

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